センター試験長文問題全訳


2012年センター試験第7問

 ピノッキオの物語を知らない人はいない。木で作られた男の子の人形が肉体と骨を持った本当の子供になりたいと夢見るのである。しかし妖精は3つの条件を出す。賢くなること、自分の振るまいを少し考えること、そして3つめは子供が従順でなければならないと弁えることである。これは幼いピノッキオにとってそれなりに難しい約束である。自由が好きな彼は、自ら世界を見出すことを好んだし、自分の周りにあらゆる類の厄介なことを引き起こす危険を間違って冒してでも、自分の持つ力を限界まで試してみることを好んだ。
 この点では、今日の若者はピノッキオとあまり違わない。若者はみな、大人になりたがっているが、大人への道には数々の障害があるのだ。そしてよく知られているように、多くの若者が若さの利点を保ちながら、大人として認められたいと願っている。若者はピノッキオのように自立した一人前の人間になりたいと努めているが、大人の人生に必要な義務や責任をすべて受け入れることはまずないのである。それで時に若者は驚くべき行動を示してしまうのである。
 子供から大人の年齢になっていく時は重要な段階である。年齢の階層によって分かれている伝統的な社会では、この子供から大人への移行は儀式によって決められている。そうした儀式は通過儀礼と呼ばれている。大人たちは、若者が自分たちの能力を証明できるように、肉体的精神的な試練を与える。試練を与えられることで、若者はささいな困難にも負けないように、人生の厳しさに堪えていく準備をするのである。試練の間に、若者は社会生活に対応するようにもなっていく。
 現代の若者は生きていく上で遭遇する問題に立ち向かう勇気に欠けていると時に言われることがある。その弱さのかげには、いくつもの恐れ、生きていくことの苦しみや、他人や自身の家族の歴史の中で自分を位置づけることができないという不安が隠されていることがたびたびある。自分の価値が認められないなら、どうやって社会の一員になれるというのか。多くの若者が社会生活の入口に立ち竦んでいる。なぜなら誰も若者を招き入れてはくれないからである。


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