Le vent se lève ! ... Il faut tenter de vivre !
(Paul Valéry, Le Cimetière marin)

風が立つ!・・生きようと努めねばならない!

 象徴主義の最後を飾る詩人であり、かつ文学、哲学、政治などにわたる分析的精神に貫かれた批評家でもあり、フランスを代表する知性と言われたポール・ヴァレリー(1871~1945)。彼が、生まれ故郷である地中海の港町Sèteの墓地を舞台に生と死についての瞑想を展開した詩篇『海辺の墓地』の最終節の有名な一文。
 ちなみに堀辰雄はこの一文から小説『風立ちぬ』の表題を取っている。小説の冒頭にエピグラフとして「風立ちぬ、いざ生きめやも」と訳出しているが、「やも」は反語の助詞なので「生きめやも」では「生きていこうか、いや死のう」という意味で、原文とは正反対になってしまう。文法と解釈を考える題材としてよく取り上げられるが、堀辰雄は原文の意味を十分に理解した上で敢えて「生きめやも」としたというのが実際だろう。小説のテーマと文体に対する強い意志が文法を凌駕した例と言えるのではないだろうか。

ヴァレリーについてもっと知りたいなら、
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