2-12  (10月8日)
  ピエールは夏でも冬でも半ズボンしか穿いたことがなかった。木登りしたり、釣りに行ったり、おじいちゃんの馬に乗ったりするのには、半ズボンはとても便利だったのだ。
  しかしある日のこと、母親は息子も長ズボンを穿く年齢だろうと考え、ピエールを無理やり店に連れて行き、長ズボンを一着選ばせたのである。母親は汚れないように濃い色で、また破れないように厚い生地のズボンを選ぶように、息子に強い調子で言った。最初のズボンを試着したピエールは、脚が自由に動かないと思った。店員は具合はどうかと訊いたが、ピエールはそのような服を以前に身につけたことがなかったので、答えることが出来なかった。彼はひどく窮屈に感じて、どうしてこんな苦しみを我慢しなければいけないのかと思った。母親はそのズボンがとてもよく息子に似合っていると店員に言った。ピエールはそのズボンに慣れるように、穿いて家に戻った。
  通りを歩きながらも彼は不自然な様子で、みんなが彼のことを見ているような気がした。
  数日後、ズボンは柔らかくなった。ピエールの身体の動きになじんで、もはや彼が動くのを邪魔するようなことはなくなった。ズボンを買ったことは彼にとって、幼年時代を脱したことを意味したのだ。
  1. comme:付加を表す。「~と、及び、並びに」 les jeunes comme les vieux「老いも若きも」 / ici comme ailleurs「どこもかしこも」
  2. de force:力ずくで、無理やりに
  3. en:中性代名詞を使わなければ、il en choisisse un pantalon.である。 
  4. insista pour que: insister pour qch [pour+〈不定詞〉; pour que+〈接続法〉] 「執拗に(何)を〔~したいと〕言い張る」
  5. couleur foncée:foncé(e)「(色が)濃い、 暗い」反対語は、clair。veste bleue foncé「ダークブルーの上着」のように色を示す形容詞の後では無変化。(clairも同様に、robe bleu clair「ライトブルーの服」と色を示す形容詞の後では無変化)
  6. se demandait:se demanderは辞書的には「自問する」だが、実際にそれほど深い意味で使われるよりは「~かどうかと思う」「不思議に思う」くらいの意味で使われることの方が多い。
  7. peu de naturel:peu de+無冠詞名詞で「ほんの少しの~、ごくわずかの~」否定的にとらえる。

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