2-20  (12月27日)
  私はデカダンス(芸術の退廃)という言葉が好きではない。それは未来というものを断罪しているように思われるからだ。デカダンスということが正当であるなんて何も証明してはいないのだ。たとえば、今日の建築は明らかにポンピドゥーの頃の建築より勝っていると私には思えるのである。また現代のバレエ、特にベジャールのバレエは、普通クラシックバレエと呼ばれるものよりも、私には常に美しく感動的に思えた。映画に至っては、新しい作品が出るたびに常に私たちを感動させ、驚愕させる。要するに、一般に芸術に関しては、最悪の場合でもおそらく私たちのためになる、すなわち音楽や絵画、彫刻を再び創りだすことが可能だと示す兆候がいくつものあると思われるのだ。それは現代的に見えたり前衛的であったりするためではなく、何か言うべきこと、表現すべきことがあり、喜びや感動を与えるためであり、友人の一人がいうように、人生がみずから意思表示するのを助けたいと願うからなのである。
  1. décadence:「退廃、衰退」ということだが、特に芸術史においては既成の価値観に懐疑的で芸術至上主義的な立場を指し、通常日本語でもカタカナの「デカダンス」である。ただし一般に「デカダンス」な芸術といった場合は19世紀末のボードレールやヴェルレーヌ、イギリスのワイルドあたりを指す。
  2. années Pompidou:ジョルジュ・ポンピドゥーが首相、大統領だった時期。1962年~1974年のあたりを指す。
  3. danse:広い意味での「舞踊」であるが、日本語の文脈ではモダンバレエという言葉もあるように「バレエ」の方が一般的なので、その語で訳出した。
  4. Béjart:20世紀バレエ団によって現代の舞踊に非常に大きな影響を与えたモーリス・ベジャール。2007年11月没。
  5. très régulièrement:直訳すれば「とても定期的に」。映画が我々を定期的に感動させる、ということは作品が出るたびにそれが感動的なものだということ。
  6. s'agissant de:「~に関しては、~に関することなので」
  7. est peut-être derrière nous:être derrière~「~を支持している、~の後ろ盾となっている」
  8. faire moderne:faire+無冠詞名詞、形容詞「~のふりをする、~に見える」
  9. être d'avant-garde:êtreのあとのdeは性質・特徴を表す。Elle est d'une patience incroyable.「彼女は驚くほど忍耐強い」
  10. à se déclarer:àはaider+目+à+inf.

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